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最高裁判所第一小法廷 平成元年(オ)733号 判決

京都市右京区鳴滝泉谷町一番地の一一

上告人

金沢潔

大阪市北区天満一丁目四番一一号

被上告人

樋屋製薬株式会社

右代表者代表取締役

坂上晴一

右訴訟代理人弁護士

小野昌延

山上和則

右輔佐人弁理士

丸山敏之

右当事者間の大阪高等裁判所昭和六二年(ネ)第二一四六号損害賠償等請求事件について、同裁判所が平成元年三月三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論は、原審において主張、判断を経ていない事項につき原判決の違法をいうものにすぎず、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤哲郎 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 大堀誠一)

(平成元年(オ)第七三三号 上告人 金沢潔)

上告人の上告理由

商標法五六条、特許法一六八条二項『訴訟において、登録商標の有効性を判断する必要のあるときは、裁判所は審決が確定するまでその手続きを中止しうる。』

判例及び通説『登録無効は、審判によってのみ確定する。裁判所で登録商標の有効性を判断することは許されず、無効原因が存在しても、審判で無効とされない限り有効として扱われる。したがって、侵害事件において抗弁として登録商標の無効を主張することもできないし、また登録商標無効確認の訴を提起することもできない。

右記の商標法、特許法、判例及び通説にもとずき次ぎの通り事実関係を明記いたします。

(一)本件上告人商標第七七三七九七号と登録商標第二六六六六九号(甲第九号証)は連合商標でございます。

すなわち、商標法によりますと、いずれか一方の商標を使用しておれば、他方は取り消しの対象とはなりえません。

また、商標法によりますと、登録商標はまったく同一で無くても商標の使用は認められております。

よって、例え上告人商標第七七三七九七号が登録無効であるとしても『樋屋十世』『坂上忠兵衛』の文字及び『坂上忠兵衛翁の像』は登録商標第二六六六六九号の許されうる範囲の使用でございます。

(二)本件は『樋屋』なる文字の使用の権利の有無を争っているにすぎず、その他の部分について両者間に争いはありません。

したがいまして、上告人登録商標第七七三七九七号が当初から存在しなかったとしても、本件損害賠償請求期間は登録商標第二六六六六九号の使用であり何等問題とはなりえません。

また、奇応丸は普通名詞であり争いの対象とはならない。

したがいまして、一、二審の判断は単に商標第七七三七九七号の有効性を問題としていたに過ぎず商標第二六六六六九号の有効性を認めて頂けなかったものであり、再度、この点を御審理頂きたくお願い申し上げます。

以上

別紙図面(一)、(二)、(三)(省略)

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